会社で借りた「発想する会社! ― 世界最高のデザイン・ファームIDEOに学ぶイノベーションの技法」を読んだ。で、面白かったので備忘録。
アメリカの有名なデザイン・ファーム、IDEOのゼネラル・マネージャが書いた本。Appleのコンピュータをはじめ、パーム、プラダ、ペプシなど様々な企業のプロダクトデザインに関わって来たIDEOがどうイノベーションを生み出して来たのか、社内の文化や方法論が書かれている。
備忘録
個人的に面白かったとこ、気になったところをメモ
IDEOの方法論
1.理解
市場、クライアント、テクノロジー、問題点について認識されている制約事項を理解すること
2.観察
現実の状況のなかで現実の人びとを観察し、なぜ人がそうするかを見つけだす。現在の製品とサービスで扱われていない隠れたニーズがどこにあるかを察知する。
3.視覚化
全く新しいコンセプトと、それを使う顧客の姿を目に見える形で描き出す。 - コンピュータによる作図 - 模型とプロトタイプ - 様々な人物がそれを使う場面や状況をストーリーボードで示す まだ実際に存在していない製品を使った生活を描いたビデオをつくる
4.評価とブラッシュアップ
短時間にいくつもプロトタイプをつくり、添えを繰り返し評価し、練りあげていく
5.実現
新しいコンセプトを市場に出すために、現実のものにする
観察する
私たちはモニターに製品について検討してもらう調査方法は好まない。従来のマーケットリサーチにもあまり関心はない。私たちはその源に行く。クライアント企業の「エキスパート」ではなく、その製品、あるいはこれからつくろうとしている製品に似たものを実際に使っている人々のところへ行く。
自分自身で見つけ出す
自分自身の目と耳で物事を見聞きすることは、画期的な製品の改良や創造の最初の重要な一段階である。これは一般に「ヒューマン・ファクター」と呼ばれる。
注意深く観察するようになれば、さまざまな洞察が得られ、あらゆる機会が開けてくる。
バグリストを作る
いつもの自分のやり方を外れたとき、もっと多くの発見への道が開ける。
現場に身を置く
芸術であれ、科学であれ、テクノロジーであれ、現場のそばにいることによってインスピレーションを得られることがよくある。これがインターネット時代にあってさえ、地理が意味を持つ理由だ。
左利きの人の身になる
私たちは「左利きの人の身になる」という原則を立てて、消費者のニーズへの共感を育んでいる。
観察の練習
単に自分をとりまく環境を見渡して検討してみるだけで、誰でもすぐれた観察術を学べる。 大抵の場合、人間のつくったシステムの多くの欠点に気づく。
ブレインストーミング
ブレインストーミングに関して困った問題は、誰もがそれをすでに実行していると思っていることだ。 ブレインストーミングはスキル、あるいは技術。たとえて言えば、靴紐を結ぶのではなくピアノを弾くようなものになりうるのに気づいていない。
よりよいブレインストーミングのための7つの秘訣
1.焦点を明確にする
2.遊び心のあるルール
- 出されたアイデアを批判したり論争をしかけたりしてはいけない。批判した者を完全に無視するのではなく、その批判を脇にそらすことが重要。
- IDEOでは、多くの会議室に高さ十五センチの文字でブレインストーミングのルールが書かれている「量をねらえ」、「思いきったアイデアをどんどんだそう」、「目に見えるように表現しよう」
3.アイデアを数える
ブレインストーミングによってわいてくるアイデアを数えることは二つの点で役に立つ。 1.参加者を刺激する道具になる「部屋をでるまでに100のアイデアを見つけだそう」 2.よどみなく進んだかどうかをはかる尺度になる
4.力を蓄積し、ジャンプする
優れた進行役について。「蓄積」の段階では会話を繋げる、議論が先細りする「ジャンプ」の段階では視点を変える。
5.場所は記憶を呼び覚ます
壁に大きなポストイットを貼り、テーブルには昔から肉屋が使っている包装紙を広げ、油性マーカーを使う。
- 精神の筋肉をストレッチする
グループのウォーミングアップをする必要があるケース - メンバーが一緒に仕事をしたことがない - 頻繁にブレインストーミングをしていない - ブレインストーミングのテーマとは関連のない差し迫った問題のせいで気が散っている
7.身体を使う
競合する製品、他の分野で見られるあざやかな解決法、問題に応用できる見込みのあるテクノロジーのすべてを持ち込む。
ブレインストーミングを台無しにする六つの落とし穴
1.上司が最初に発言する
2.全員にかならず順番が回ってくる
3.エキスパート以外立ち入り禁止
4.社外で行う - スキー場とかビーチでやると逆効果になる場合がある
5.ばがげたものを否定する
6.すべてを書き留める
障害のなかの機会
逆境はチームを一つにする接着剤の役割をはたし、そこからさらに強くて固い絆が生まれる。
チームは狭い場所に
狭い場所で一緒に働き、生活をともにすることによって、ホット・グループに力をみなぎらせることができる。
面積が広すぎるのは、予算が多すぎるのと同じく、エネルギーが拡散さえ、チームのメンバーのあいだの固い仲間意識が損なわれることがある。
チームの士気
特別な気分を味わうと人は破天荒な夢さえ上回ることを成し遂げる
大切なのはどれほどの金をかけるかではなく、どんな経験ができるかである。
人を特別な気分にさせるもう一つの素晴らしい方法はさぼらせることだ。(午後を休みにしてチーム全員で野球の観戦に出かけたり
楽しみに費やす時間と費用について心配してはいけない、チームがどれほど時間を失おうと、翌週には取り戻すし、あっという間に黒字になる。
ホットグループのための八つの風変わりな個性
プロトタイプ
プロトタイプ制作は、問題を解決する方法だ。そして、文化であり言語である。新しい製品やサービス、あるいは特別なプロモーションなど、ほぼすべての物事についてプロトタイプを作ることができる
アマゾンのやり方
ベゾズは数週間のうちにウォール・ストリートの安楽な仕事を辞め、引っ越しトラックを呼ぶと「荷造りをして、行き先を運転手に告げる前にトラックに積み込んだ」。信じられないことに、ベゾズは自分のインターネットビジネスの種をどこに蒔くかもまだわかってなかった。
幸運を作り出す
図面を引いたり何かをつくりはじめたりすれば、思いがけない発見、あるいは幸運と呼んでもいいが、何かを新たに発見する可能性が開けてくる。
モノをつくったり、試作品を使ってみたりする癖をつけよう。次の画期的な作品の着想となる洞察が得られるかもしれない。
まずいアイデアをつぶす
思いついたアイデアがまずくても、とりあえずそのプロトタイプをつくり、やはり駄目だからつぶしてしまう
温室をつくろう
ごちゃごちゃしてるけどなんかかっこいいオフィスの写真が載ってて良かった。。
オフィス
とっさにミーティングが開ける場所があるだろうか?開放的な部分とプライバシーを保てる部分が違和感なく溶け合っているだろうか?そして同じくらい大切なことだが、社員たちが自分のスペースに仕事と趣味を堂々と示すように奨励されているだろうか。
ブロック
私たちのオフィスには、大きさが牛乳パック用ケースほどの立方体のフォームがいたるところにある
種まきの七つのヒント
- 雑誌の購読とネットサーフィン
- 映画監督になる
映画監督の視点を身につけて観察の達人になろう
- 一般公開する
定期的に会社の一般公開日を設ける
さまざまな主張に耳を傾ける
アウトサイダーを雇う
違う人間になってみる
二職種以上の仕事ができるように訓練する
バリアを飛び越える
バリアは外部的なもの、新しい製品やテクノロジーに対する文化的な抵抗かもしれない、あるいはしっかりと根付いた習慣であるかもしれない、人びとの製品の理解の仕方や使用方法はしばしばイノベーションの障害となる
バリアと橋
バリア | 橋 |
---|---|
階層ベース | 利益ベース |
官僚制 | 自治制 |
個性がない | 気兼ねがない |
整頓 | 乱雑 |
専門家 | 何でも屋 |
楽しい経験をつくりだす
何かを創造する仕事をしている人は、誰でもなんらかの経験をしている。だから、動詞、つまり行動に焦点をおこう。
目標は店舗をより素敵にすることではない。買い物という経験をより素敵にすることだ。
製品やサービスを要素に分解することから始める。これが、言わば経験のDNAとなる
ナイキタウン、ワーナーブラザーズ、スタジオ・ストア、ディズニー・ストアはテーマによって構成した「独自の経験を売っている」
ラスベガスに行ってみることをお勧めする。どんな分野の仕事や産業も多くのことを学べる
時速100キロのイノベーション
- スピードは重要である。スピードがあればこそ、ライバルがスターティング・ゲートをでる前にあなたのブランドを消費者の心に植えつけられる。
枠をはみだして色を塗る
イノベーションに関して決定を下すのは、危険をおかすことだ。
最良の企業は常に未知の世界に飛び込んだ全く新しい企業である。
失うかもしれないもの 市場のシェア、収入、肩書き、ステータス、仕事について考えてしまうと、まず飛躍はできない。
サウスウェストは大手航空会社に成長しても、敏感で起業家精神にあふれたその企業文化を失っていない。小企業と同じように考えて行動することは重要だ。
私たちが肩書きや大きなオフィスを拒否するのは、それが精神的にも物理的にもチームと個人の間に障壁を生み出すからだ。
1日に20のアイデアを生み出さなければならないホールマーク社のトップ・プロデュース・ユーモア部門シューボックス
はみ出し過ぎは禁物
ウェットナップインターフェイスを探して
- 機能のつめこみと戦う
すばらしい製品やサービスを生み出す方法
入りやすい入り口をつくる
発想をうながす具体例を探す
15センチ上からそれをデスクの上に落としても、壊れないと思えますね?
ブリーフケースを考える
アメリカの典型的な働く男性がブリーフケースやランチボックスを愛したのは、それが家に持ち帰れる数少ないものの一つだという単純な理由からだ。
仕事と家庭の枠を超える機器は愛着をかきたてる
色のインスピレーション
デザインにおいて色が最も役に立つのは、きわめて重要な初期の段階である。
舞台裏を見せる
カーテンの向こうで何が起きているかを顧客に知らせてあげよう。そうすればビジネス面での見返りがあるし、会社や製品の忠実なファンをつかむこともできる
クリックは二回よりも一回の方がいい
ミスを許容する
「自動保存」や「もとに戻す」コマンド
傷つけないことが第一
当たり前のことに聞こえるが、あまりにも多くの企業がこの最も基本的な原則を忘れている
チェックリスト
チェックしなければいけない基本機能と互換性の一覧
必要事項のチェックリストを作成しよう
すばらしいおまけ
すばらしいアクセサリーや小さい部品が製品自体を支えることがある
未来を生きる
高齢者に製品やサービスを売るのなら、退職者のコミュニティやコーヒーショップへ行ってみるのも悪くない。
映画の予告編をつくる
製品やサービスを開発しながら広告を書いてみよう
完璧なスイングを身につける
何より大切なのは、できる限り練習することだ
顧客を(顧客でない人々をも)観察する。特に熱中している人がいい
前向きな「ボディランゲージ」を従業員と訪問者に送れるような仕事場を工夫する
製品やサービスを提供するとき、「名詞」ではなく、「動詞」で考える
ルールを破り「失敗して前進する」
人間らしさを失わず、組織の環境を調整して、ホットチームが生まれ育つ環境をつくる
一つの部門から別の部門へ、会社から将来の顧客へ、そして最終的には現在から未来への橋をかける